根に持つわたし 1
「あー、違う、そういうことじゃないんだよなあ。」
その女性は悪気なく、きっとなんのことはなく、そう私に言った。
突然、一本の指を目の前に出しながら、
「これをじっと見て」とその人は言った。
私は目をできる限りまんまるくして、その指をみつめた。
そうしたら、そうじゃないんだよな、と彼女は言ったのだ。そしてすぐ別の子の所へ行ってしまった。
どうやら寄り目になる、と言うのが正解だったらしい。
私はその何気ない一言がショックで、しばらく愕然とした。
多分5歳くらいだったと思う。
保育園時代の、記憶に残る一場面だ。
私はこの年頃の記憶がわりとよく残っている。
でも思い出すのは、恥ずかしさとか、悔しさといった、どちらかというと、マイナス寄りの感情を伴うものばかりなのだ。